困りごとは、一緒にほどく|お直し相談で大切にしていること

お直し相談編お直し

お直し屋さんに服を持っていくとき、
「うまく説明できるかな」
「専門用語を知らないけれど大丈夫かな」
と不安になることがあるかもしれません。

でも、最初から正しい言葉で説明できなくても大丈夫です。

困りごとは、最初からきれいな言葉で出てくるとは限りません。

「なんとなく着にくい」
「ここが気になる」
「前はいいけれど、後ろが変」
「座ると苦しい」
「長い気がするけれど、どこを直せばいいのかわからない」

そんな言葉からで十分です。

お直しは、専門用語を言い当てる場所ではありません。
困っていることを、一緒にほどいていく場所です。

玄人の親切が、素人を置いていくことがある

服のことをよく知っている人ほど、早く答えを出せることがあります。

「これはこう直します」
「これは直さない方がいいです」
「これは高くなります」
「これはうちではできません」

どれも、間違った言葉とは限りません。
むしろ、経験から出てくる親切な判断であることもあります。

でも、聞く側がまだ困りごとをうまく言葉にできていないときに、いきなり結論だけを渡されると、少し置いていかれたように感じることがあります。

「私の事情は、まだ話していないのに」
「どう着たいかまでは、聞かれていないのに」
「安く済ませたいとは限らないのに」
「この服に思い入れがあるのに」

そんなふうに感じることもあると思います。

玄人の親切は、下手をすると、
「あなたは知らないでしょうけれど、これはこうです」
というふうに届いてしまうことがあります。

だからこそ、結論の前に、まず困りごとを一緒に見ることが大切だと思っています。

大切にしたい順番

お直しの相談で大切にしたいのは、この順番です。

共感
観察
翻訳
提案
判断

まずは、困っていることを受け止める。

「気になりますよね」
「着にくいんですね」
「そこが不安なんですね」

次に、どこが、いつ、どう困るのかを見ていく。

立ったときなのか。
座ったときなのか。
歩いたときなのか。
仕事で着るのか。
お出かけで着るのか。
毎日着たい服なのか。
特別な日に着たい服なのか。

それによって、直し方の優先順位は変わります。

そして、困りごとを少しずつ言葉にしていきます。

「つまり、丈そのものより、靴に当たるのが困るんですね」
「首が詰まるというより、前に引っ張られている感じですね」
「全体が大きいというより、肩まわりが落ち着かないんですね」
「きついというより、座ったときに余裕が足りないんですね」

こうして困りごとの正体が見えてくると、直し方も考えやすくなります。

方法はひとつとは限りません

お直しには、方法がひとつだけではないことがあります。

きれいに元の仕様に近づける方法。
費用を抑えて、実用的に直す方法。
見た目を優先する方法。
着心地を優先する方法。
今回は直さず、別の着方を考えた方がよい場合。

どれが正解かは、その服と、その人の事情によって変わります。

たとえば、普段着なら費用を抑えて実用的に直す方法が合うこともあります。
反対に、思い入れのある服や、特別な日に着る服なら、時間と費用をかけてでも、きれいに直す方が納得できることもあります。

費用を抑えたい気持ちは、悪いことではありません。

ただし、費用を抑える方法と、きれいに仕上げる方法では、仕上がりに違いが出ることがあります。

だから、

「きれいに直す方法と、費用を抑える方法があります。どちらを優先したいですか?」

と確認することが大切です。

これは、どちらかを選ばせて突き放すための質問ではありません。

お客様の事情を大切にしながら、あとで困らないように、一緒に選ぶための質問です。

仕上がりの違いは、正直に伝える

お直しでは、できることと、できないことがあります。

できるけれど、跡が残ること。
できるけれど、元通りにはならないこと。
できるけれど、費用が高くなること。
できるけれど、仕上がりの美しさより実用優先になること。

そういう違いは、なるべく先に伝える必要があります。

それは、お客様を不安にさせるためではありません。
あとで「こんなはずではなかった」とならないようにするためです。

正直に伝えるとは、
「無理です」
「やめた方がいいです」
と一方的に閉じることではありません。

「この方法ならできます。ただし、ここに少し縫い目が出ます」
「費用を抑えるならこの方法があります」
「きれいに仕上げるなら、こちらの方法になります」
「今回は、この部分を優先するとよいと思います」

そんなふうに、選ぶための材料を渡すことです。

お直しは、正解を押しつける場所ではありません

服の困りごとは、人によって違います。

同じ「丈が長い」でも、
引きずるのが困る人もいれば、
見た目のバランスが気になる人もいます。

同じ「きつい」でも、
立っているときは平気で、座ると苦しい人もいます。

同じ「大きい」でも、
全体ではなく、肩だけが合っていないこともあります。

だから、お直しは最初から正解を押しつける場所ではないと思っています。

まずは、一緒に見る。
困りごとを言葉にする。
優先したいことを整理する。
そのうえで、直し方を考える。

この順番を大切にしたいです。

困りごとは、一緒にほどいていけば大丈夫です

お直し屋さんに行くとき、最初からきれいに説明しようとしなくても大丈夫です。

「なんとなく着にくい」
「ここが気になる」
「どう言えばいいかわからない」

そこからで大丈夫です。

困りごとは、最初から正しい言葉で出てこないことが多いからです。

共感して、観察して、翻訳して、提案して、最後に判断する。

この順番なら、お客様を置いていかずに、専門的な判断もできます。

お直しは、専門用語を言い当てる場所ではありません。
困りごとを、一緒にほどいていく場所です。

うまく言えなくても、大丈夫です。
「どこが気になるのか」から、一緒に見ていきましょう。

※お直し屋さんには、それぞれ得意分野や方針があります。
この記事は、すべてのお店の対応を前提にしたものではなく、お直しを相談するときの考え方や伝え方を整理したものです。
実際に依頼するときは、対応できる内容・料金・仕上がりについて、各お店で確認してください。

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