子どもの頃、私は「名工」と呼ばれる人たちに憧れていました。
手間暇を惜しまず、趣のある“作品”を一心に作り上げる姿。
寡黙で、不器用そうで、それでも揺るがない生き様が、
なぜかとても格好よく見えたのです。
身近に、そんな匠がいたのだろうか。
思い返すと、父は趣味で紙飛行機を作っていました。
紙を何枚も重ね、丁寧に貼り合わせ、少しずつ形を整えていく。
完成までに何日もかかることは、決して珍しくありませんでした。
ノリの加減や貼る位置がほんの少し違うだけで、
バランスは大きく崩れてしまう。
真っ直ぐに、遠くまで、長く飛ばすことは本当に難しい。
それでも父は、机の上に設計図や型紙を広げ、
黙々と、自分の世界に没頭していました。
一方で祖父は、孫の目から見ると、
少しおっちょこちょいで、どこかシャイな人でした。
けれど市の議員として、市民の声に耳を傾け、
一つひとつの相談に丁寧に向き合う政治を続けていました。
家にはいつも誰かが訪れ、
祖父は急かすことなく、静かに話を聞いていました。
今になって、あの光景がどれほど貴重だったのかが、よくわかります。
そして——
気がつけば、自分も当時の祖父と同じ歳になっていました。
もう、そんな歳になっていたのだな、と。


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